2015年07月15日

リアリスト、福沢諭吉

近代日本思想史を専門とする先崎彰容東日本国際大学教授によれば、啓蒙主義者と評される福沢諭吉は優れたリアリストだそうです。そもそも人を啓蒙するには、思想も理想も脇において、何よりも先ず現実を明晰に分析できていなくてはならず、それにはリアリストであることが必須であると。

そういえば、福沢諭吉の言論活動の汚点のように言われていた「脱亜論」も、近年はその分析がいかに的確だったか、あらためて見直されていますけど、これも時代の空気に流されず、冷静に現実を看破した福沢諭吉の視点の確かさでしょう。

ところで、福沢諭吉の慶応義塾のライバル、早稲田の大隈重信は、対照的に現実より理念優先の人物だったようです。

最近読んだ本によれば明治31年、米国とスペインの米西戦争で勝ち進む米国に、そのやり方をよしとしなかった当時の首相大隈重信は、友好関係にあった米国にいきなり宣戦布告のような文書を送りつけ、一つ間違えば日米が戦争になるようなことをやってしまったそうですよ。

先日、テレビで取り上げていた明治神宮の歴史番組でも、明治神宮の森を作るとき、当時すでに大気汚染の始まっていた東京の真ん中に作る森にはどういう樹木が向いているか、専門家が知恵を絞って考え出したプランを大隈重信は反対したそうです。その理由が、「神宮の森は杉と決まっている」だったと。

もう理念だけで現実を無視しているわけですよ。しまいには担当した樹木の専門家が、「もし森が全て枯れてしまったら、大隈卿、あなたのせいですよ」と脅しに近いことまで言って、やっとOKをもらったそうです。

現実よりも理念優先という政治家は困ったものです。しかし、優れたリアリストであった福沢諭吉は、生涯政治家にはならなかったのも面白い。こういう不思議が人の世だということを理解するのもリアリストの第一歩かと。
posted by 曲屋 at 23:09| Comment(0) | 歴史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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